喜太郎の木版画和紙とは

清らかな谷川に恵まれた越前では、いにしえより紙漉きの技術が発展してきました。良質の清水によって一枚一枚漉かれた和紙は、高い品質を誇ります。また種類も豊富なことから、越前は日本最大の和紙産地として知られています。喜太郎では、創業以来木版画用紙や装飾性の高いラベル紙などを製作しています。昔から変わらぬ手漉きの技を守り継ぎ、塵ひとつない清冽な和紙の美しさをご提供しています。

世界へ羽ばたく越前和紙

越前和紙の歴史

越前和紙の歴史

越前和紙は、現在の福井県越前市(今立五箇)を中心につくられる和紙です。鎌倉時代には今立の地で勢力を誇っていた大滝寺の保護を受け、室町時代には「越前奉書(えちぜんほうしょ)」を生み出しました。以後、公家や武家の公用紙として普及し、明治時代以降は紙幣製造、京都画壇をはじめとする多くの芸術家の支持を得て日本一の和紙産地として知られるようになりました。当社は明治5年に創業し、当時は真っ白な奉書紙を手掛けていましたが、近年では木版画用紙を中心に制作しています。塵ひとつない美しい紙面と丈夫さ、風合いの良さに著名な版画家や版元から支持を受けています。

オランダの画家、レンブラントも愛用か

オランダの画家「レンブラント」が越前和紙を使用!?

17世紀の画家レンブラント(1606~1669年)の版画に越前和紙が使われた可能性があるとして、レンブラントの出身国オランダ・アムステルダムにあるレンブラントハウス美術館で展示会が開かれるなど、越前和紙が注目を浴びています。江戸時代の長崎・出島のオランダ商館の帳簿には、雁皮を原料とする和紙の輸出記録があります。当時の産地としては越前と摂津が主産地でした。光学顕微鏡で作品の繊維を調べてみると、越前和紙が使われている可能性が高いとされています。



究極の木版画用紙を手掛ける、喜太郎の特徴と思い

喜太郎では主に木版画用紙を生産しています。木版画用紙は、絵の具の発色の良さや質感、吸湿性、風合いなど、多くの要素が求められます。この品質を守る上で特にこだわっているのが「塵選り(ちりより)」と「乾燥」の作業です。和紙は、楮(こうぞ)や三椏(みつまた)といった木の皮から取り出した繊維でつくられますが、この繊維には「塵」と呼ばれる細かな木の皮や砂、ゴミなどが付着しています。それを丹念に手作業で取り除いていきます。この「塵選り」が美しい紙面をつくる秘訣なのです。

また、漉いた和紙を乾かす板には銀杏(いちょう)の木を使用しています。古くから越前地方に伝わるこの乾燥方法は、天然の銀杏を用いることで適度に水分を吸収し、やわからなか風合いをもつ和紙へと仕上がります。

ちょっとした手間を惜しまない

「木版画用紙は、少しでも塵が混じっているとあきません。版をこする際に、馬連(ばれん)に傷がつくからね。だから最後は人間の手作業が欠かせないんです。また、乾燥は他所ではステンレスの板を使うことも多いけど、やっぱり天然木にこだわりたい。仕上がりが全然変わってくるんです。ちょっとした手間でも惜しまんことが大切やね」と語るのは5代目山口良喜です。


喜太郎の創業143年の製作工程

1. 煮沸・灰汁出し・塵選り

煮沸・灰汁出し・塵選り

原料である木の皮を煮て(「煮沸」)、繊維を取り出します。灰汁を出して水で洗い流し(「灰汁出し」)、繊維についた塵を洗いながら取り除きます(「塵選り」)。特に木版画用紙の場合は、塵ひとつ残らないよう、丹念に取り除く作業が繰り返されます。


2. 叩解・ねり

叩解・ねり

木の皮である繊維を叩きほぐし、細かく柔軟にします。使う素材に合わせ叩解度を変え、強靭で滑らかな紙を作ります。ほぐした繊維と水とネリを漉槽(すきそう)の中でよく攪拌(かくはん)し、紙液をつくります。ネリとはトロロアオイという草の根から抽出された粘質液で、繊維の均一な攪拌を助けます。


3. 抄紙

抄紙

漉簀(すきす)と呼ばれるすだれを敷いた漉桁(すきげた)で紙液をすくい、前後左右にゆすって繊維をからませ、紙を漉いていきます。(「抄紙」)。越前和紙では「流し漉き」と「溜め漉き」の2つの手法があります。

 


4. 圧搾・乾燥・仕上げ

圧搾・乾燥・仕上げ

漉いた紙は圧搾機にかけて十分に水気をとります(「圧搾」)。その後、刷毛やローラーを使って銀杏の木の板に貼り乾燥させます。天日ではなく室(むろ)という乾燥室で乾かすのが、越前和紙の特徴です。乾燥した紙を板からはがして仕上げます。

 


5. 検品

検品

 乾燥後、検品を行います。裏表をみて、塵や傷がないかを念入りにチェックします。


6. 礬水引き

礬水引き

検品後、礬水引きを行います。礬水(どうさ)は、ゼラチンとミョウバンを混合した液体のことです。これを乾燥させた和紙の表面に塗ることで、にじみ止め効果を持たせることができます。


7. 発送

発送

巻き梱包または平板梱包にて発送を行います。商品に傷がつかないよう、試し刷りにお使い頂ける木版画用紙にて包装を行っています。